特定建築物定期調査について

建築基準法第12条 特定建築物定期調査について

デパート、ホテル、病院など、不特定多数の人が利用する特定建築物については、構造の老朽化、避難設備の不備、建築設備の作動不良などにより、大きな事故や災害が発生する恐れがあります。

こうした事故等を未然に防ぎ建築物等の安全性や適法性を確保するために、建築基準法第12条では建築物の所有者に対して、3年毎に、専門の技術者(調査者・検査者)により定期的に調査・検査し、特定行政庁に報告することを求めています。この3年毎の調査は手の届く範囲を打診、その他を目視で調査し、異常が確認された場合は全面打診等が必要です。加えて竣工後、外壁改修後等から10年を経てから最初の調査の際に「歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」を全面打診等による調査が義務付けられました。

〇報告義務者(報告を行うべき者)

建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)、分譲マンションの場合は一般的にそのマンション管理組合(代表者)が報告義務者となります。

報告は建築基準法第12条に定められており、報告を怠ることは法令違反となります。
またその場合、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります。

※例外として・・・

1.当該調査の実施後3年以内に外壁改修もしくは全面打診等が行われることが確実である場合
2.別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じられている場合

上記の場合は、全面打診等を実施しなくても差し支えない。
建物外壁における調査対象となる仕上げ材は、主に以下の3種類です。

タイル張り

...

石張り

(乾式工法を除く)

モルタル張り

...

全面打診調査と定期報告の対象となるのは、建築物の竣工後または外壁の改修後、10年を超えた物件で、調査は主に外壁の損傷確認や剥落防止、歩行者等への危害防止と補修・落下防止方法の検討のために実施されます。

10年以内の竣工・改修物件や、外装材にタイル・石張り・モルタル張りを使用していない物件は、目視による調査を実施します。10年超の物件でも、3年以内に外壁改修または全面打診調査を行うことが確実である場合や、歩行者の安全対策が取られている場合は、目視及び手の届く範囲内での部分打診調査を実施します。ただし、目視や部分打診調査で異常が判明した場合は、全面打診調査が必要となります。

〇歩行者等に危害を加える恐れのある部分とは

調査対象:外壁(外装仕上げ材等)

公道、不特定多数が通行する私道、 構内通路、広場を有するもの。ただし、壁面直下にSRC造等の 強固な落下物防御施設が設置され、または植込み等により、影響角が完全にさえぎられ、災害の危険がないと判断される部分を除くものとする。

資格別調査・検査資格
資格 特殊建築物 建築設備 昇降機等 防火設備
1・2級建築士 ○(該当) ○(該当) ○(該当) ○(該当)
特定建築物調査員 ○(該当) ×(非該当) ×(非該当) ×(非該当)
建築設備検査員  ×(非該当) ○(該当) ×(非該当) ×(非該当)
昇降機等検査員 ×(非該当) ×(非該当) ○(該当) ×(非該当)
防火設備検査員 ×(非該当) ×(非該当) ×(非該当) ○(該当)

定期調査・検査報告制度

国土交通省告示第 282 号

(い)調査項目 (ろ)調査方法 (は)判定基準
外装仕上げ材等 タイル、石貼り等 (乾式工法による ものを除く。)、モルタル等の劣化 及び損傷の状況 開口隅部、水平打継部、斜壁部等のうち手の届く範囲をテストハンマーによる打診等により確認し、その他の部分は必要に応じて双眼鏡等を使用し目視により確認し、異常が認められた場合にあっては、落下により歩行者等に危 害を加えるおそれのある部分を全面的にテストハンマーによる打診等により確認する。ただし、竣工後、外壁改修 後若しくは落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等を実施した後 10 年を超え、かつ 3 年以内に落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等を実施していない場合にあっては、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分を全面的にテストハンマーによる打診等により確認する(3 年以内に外壁改修等が行われることが確実である場合又は別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合を除く。)。  外壁タイル等に剥落等があること又は著しい白華、ひび割れ、浮き等が あること。

第12条 条文(報告・検査等)

1、第6条第1項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者にその状況の調査(当該建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、当該建築物の建築設備についての第三項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

2、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第一号に掲げる建築物その他前項の政令で定める建築物に限る。)の管理者である国、都道府県若しくは市町村の機関の長又はその委任を受けた者(以下この章において「国の機関の長等」という。)は、当該建築物の敷地及び構造について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は同項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。

3、昇降機及び第六条第一項第一号に掲げる建築物その他第一項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

4、国の機関の長等は、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の昇降機及び国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第六条第一項第一号に掲げる建築物その他第一項の政令で定める建築物に限る。)の昇降機以外の建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は前項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。

5、特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途又は建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況に関する報告を求めることができる。 

一、建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、工事監理者又は工事施工者

二、第1項の調査、第2項若しくは前項の点検又は第3項の検査をした一級建築士若しくは二級建築士又は第一項若しくは第三項の資格を有する者

三、第77条の21第一項の指定確認検査機関

四、第77条の35の5第1項の指定構造計算適合性判定機関

6、建築主事又は特定行政庁の命令若しくは建築主事の委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員にあつては第6条第4項、第6条の2第11項、第7条第4項、第7条の3第4項、第9条第1項、第10項若しくは第13項、第10条第1項から第3項まで、前条第1項又は第90条の2第1項の規定の施行に必要な限度において、建築監視員にあつては第9条第10項の規定の施行に必要な限度において、当該建築物、建築物の敷地又は建築工事場に立ち入り、建築物、建築物の敷地、建築設備、建築材料、設計図書その他建築物に関する工事に関係がある物件を検査し、若しくは試験し、又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者に対し必要な事項について質問することができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。

7、特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに第一項及び第三項の規定による報告に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する台帳を整備し、かつ、当該台帳(当該処分及び当該報告に関する書類で国土交通省令で定めるものを含む。)を保存しなければならない。

8、前項の台帳の記載事項その他その整備に関し必要な事項及び当該台帳(同項の国土交通省令で定める書類を含む。)の保存期間その他その保存に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。

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